鳥の魅力にとりつかれた人たちは大型台風が日本に近づけば近づくほど落ち着きがなくなるそうです。ふだんは日本には渡ってこない遠く南の島の珍しい鳥たちが台風の風に乗って(吹き飛ばされて)日本にやってくる事が多いからだそうです。台風上陸後、何日か経ってから、上陸地付近の海岸線にやって来るのはそんな「珍鳥との出会い」に取り憑かれた人たちかもしれません。
かと思えば、アメリカの国鳥である「白頭ワシ」が空中でフンをする姿だけを見にアラスカ東南部まで行ってしまう人もいるそうです。羽を伸ばすと約1.5mの白頭ワシの排泄物は鳩の約20倍の重さであり、それなりの大きさですから、その棒状の真っ白いナニが波打ちながら空中を落下してくる光景は、とてつもなく迫力があるということです。(写真:US1$紙幣の白頭ワシ)
趣味の世界はどんどんディープになるのが一般的です。でも最初はみんな初心者。右のコラムのように双眼鏡を覗かせてもらったらカワセミがいてその羽根の色に魅せられたり、ご近所にマニアの方がいたり、旅先で見たこともない綺麗な鳥を見たりなど、きっかけは様々なようですが、バードウォッチングの魅力をひとことで言えば、雑木林や森や山に分け入り、人が自然の一部となることではないでしょうか。自然の元気を分けてもらい自分も元気になれる趣味はそうないはずです。明日から、ご夫婦やご家族でバードウォッチングを始めてみませんか?
鳥の日常は、人間社会とよく似ています。特別な鳥以外は朝起きて夜寝る、つがいとなり子を産んで育てる、餌を見つけ小分けにして運び食べる、コミュニケーションの手段は「鳴き声」という言葉、色彩を感じる目............などなど。あなたもまずは早起き。起きたら窓を一杯に開けてみてください。「朝だぞー、今日も元気に生きてやるぞー!」と言っているかどうかはわかりませんが、何らかの鳥の声が必ず聞こえて来るはずです。声を辿ればその姿も見えるはずです。スズメかもしれません、カラスかもしれません、でも名前なんかまだどうでもいいことです。5分でも10分でもその鳴き声に静かに耳を傾けてみてください。朝刊を読むだけではない、今までにない新しい朝の始まりです。
何日か鳥の声を聞いていると、同じ鳥でも鳴き声(鳴き方)に種類があることがわかってきます。高低、メロディラインの違いから、仲間を呼んでいたり、朝の会話を楽しんでいたり、………、何となく「鳥語」が分かるような気になったら、もうあなたは立派なバードウォッチャーです。
次のステップは、早起きついでに近所の公園まで散歩はいかがでしょうか。別の種類の鳥がまたいます。家の近所にはいなかった別の種類の鳥に必ず気付くはずです。近所に川があったり沼や湖や海のすぐ近くにお住まいであれば、もっとラッキー。たくさんの鳥たちに出会えるはずです。
〈写真提供:谷津干潟自然観察センター〉
公園や、近所の川や湖沼海へ「鳥も見に行く」散歩が楽しくなったら、お休みの日、一度近くの野鳥観測スポットまで、ご夫婦で足を伸ばしてはいかがでしょうか?事前にインターネットで調べれば、近くに必ずそういうスポットがあるはずです。出来れば案内をしてくれる方がいるところがいいでしょう。帽子をかぶりデイバックを背負って、そう、ちょっとした遠足です。そういうスポットには双眼鏡の貸し出しもあったりします。初めて双眼鏡や単眼鏡で鳥をアップで見たときの驚きと感動は絶対忘れないはずです。写真に残したいとも思うはずです。鳥たちと一緒に過ごすときの諸注意、服装、靴、帽子等はどんなものがいいか、どうぞ事前に係の方に聞いてみてください。
次は、日本野鳥の会やバードウォッチングスポットが主催している「探鳥会」に参加してみることです。この種の会はリーダーの方がいて、初めての方にも親切に、バードウォッチングの手順や、双眼鏡の使い方を教えてくれます。近くにお住まいのバードウォッチング歴が長い方と懇意になれることや、お昼休みにいろいろアドバイスが受けられることなど、メリットもたくさんあると思います。(最初は皆、初心者。ビギナーであることをリーダーの方や周りの方に、どうぞ胸を張ってアピールしてください。)
カワセミの感動。
ある主婦の方が、ご自分のブログで、「川沿いを散歩していたら双眼鏡で何かを見ている人がいた。何をしているんですかと伺ったら、鳥を見ているのだと言う。覗かせてもらったらカワセミ。その鮮やかなコバルトブルーに魅せられたのが最初のきっかけ!」だったと書いています。この話には続きがあって、「それ以来、主人と一緒にバードウオッチングにはまり、休日はおにぎりを持ってあちこちに出かける毎日です。バードウオッチングは大きな声でおしゃべりをしていると鳥がすぐ逃げてしまうので、あまりおしゃべりではない主人で助かっています............。家ではもう少し夫婦の会話があってもいいなとは思いますが。(笑)」とありました。
ものさし鳥。
いろいろな本に出ていますが、日本では約555種類、地球上では約9,000種類の野鳥が観察されているそうです。こんなにたくさんの鳥たちを、いったいどんなふうにして見分けているかと言いますと、まずは大きさなんだそうです。スズメ、ハト、カラス、この3種類の鳥の大きさならだいたいの見当はつきますよね。そこで、見慣れない鳥を見つけたらその鳥がスズメより大きいか小さいか、ハトより大きいか小さいか、カラスより大きいか小さいかを、まず、考えるんだそうです。
野鳥図鑑には様々な鳥のおおよその大きさが書いてありますから、そこから当たりを付け、大きさの他に「からだやくちばしなどの形」、「目立つ色や模様」などから徐々に絞り込んでいくんだそうです。このスズメ(全長15cm)、ハト(キジバト全長33cm)、カラス(ハシブトカラス全長56.5cm)を「ものさし鳥」と呼び、この3種にスズメとキジバトの中間のムクドリ(全長24cm)やヒヨドリ(全長27.5cm)を加える場合もあります。覚えておくと便利です。